家庭での観察、獣医師による検診
飼い主の皆様が『ここ数日何か元気がないのです』とおっしゃる時、たいていは何らかの問題が生じているものです。 つまり、ご家庭での観察は私たち獣医師が参考にする最大のヒントになります。 では、『何にも変化がないから、そのままでよいか』というと、決してそうではありません。 動物の病気には、気がつかないうちにゆっくりと進むものが多く見られます。 たとえば、甲状腺や副腎などホルモンを分泌する器官の病気や、肝臓や腎臓の疾患は症状に現れたときにはずいぶんと進行していることがあります。
このような、とてもゆっくりと進む病気を見つけるのは家庭医の役割です。 身体検査(これは獣医師の行う最も大切な仕事です)や、血液・尿の検査などを行い、前回の検診の記録とつき合わせます。 もちろん加齢にともなう変化もありますが、何か病的な変化が見つかれば、詳しく診察・診断して病気の進行をストップできることも多いものです。
犬や猫の場合、一般に若いうちから5〜6歳までは、年に1度の検診でよいとされています。 中年期(6から7歳)以降は年に2回、12歳を過ぎたら年に3回の検診が勧められています。 できれば、検診と検診の中間に体重測定と身体検査だけ受けられれば、ベストでしょう。 外飼いの犬は冬がくる前に一度、検診を受けておきたいものです(特に北海道)。
定期健診を「クセ」にしましょう
定期健診は、「定期的に行う」ことこそ、意味があります。 その時の検査結果やデータは、あくまで「瞬間風速」であり、長期にわたってペットの体調がどんな方向に向いているかはわかりません。 一例としては、中年の犬の検査データで過去三年間、少しずつ総コレステロールが上昇しているとします。 この場合、症状として特に何も見えなかったとしても、老年期の甲状腺ホルモンの不足が進んでいる可能性があり、厳寒期の前に詳しい検査を行うべきでしょう。 また、毎年尿検査で尿が薄くなって行っている場合なども、腎臓や副腎の異常が進行しているかも…という捉え方も可能です。
動物病院でもらった検査結果は、スクラップブックに貼り付けたり、ファイルしたりして保持しましょう。 何かの理由で別の動物病院を受診する場合にも、それらを持参すれば、大変良い診断・治療の資料になります。
毎年検診を受けていると、「去年もおととしも、検査結果は正常だったから、今年はいらないかな」と考えたくなりますが、毎年の定期健診の積み重ねが、病気の早期発見を可能にします。 健康そうに見えても定期健診を必ず受ける、これが定期健診を「クセにする」ことです。